厚生労働省とキャリアコンサルタントの関わり
皆さん、キャリアコンサルタントという言葉を聞いたことはありますか?ここでは厚生労働省とキャリアコンサルタントの関わりについてご紹介したいと思います。
具体的には、
1. そもそもキャリアコンサルタントは、いつ頃できた資格なのか?
(1)アメリカにおける発展
(2)日本における発展
2. 厚生労働省とキャリアコンサルタントの関わりについて
(1)2001年以前( 完全な民間資格)
(2)2002年から2007年まで(厚生労働省の指定団体)
(3)2008年から2016年3月まで(国家検定)
(4)2016年4月以降(国家資格)
3. 今後のキャリコン業界の展望について
について紹介していきたいと思います
1. そもそもキャリアコンサルタントは、いつ頃できた資格なのか?
(1)アメリカにおける発展
キャリアコンサルティングの源流は、古くは20世紀初頭のパーソンズの職業指導運動にさかのぼると言われています。制度として確立するきっかけになったのは1929年から始まった10年間の世界恐慌です。失業者が大量発生し、そのまま第二次世界大戦に突入し1945年に戦争が終了すると何十万人という復員兵を含め就職斡旋活動・心理的精神的ケアが緊急課題になりました。
正式には1951年にアメリカ心理学会で「カウンセリング心理学」が公式承認され、これがキャリアコンサルタントは始まりといえます。アメリカでは1世紀近い歴史があるといえます。
(2)日本における発展
日本では大正時代には、「職業指導」(Vocational Guidance)がアメリカから入ってきました。公共職業安定所(現在のハローワークの前身)もできました。しかし、日本では戦後特に1950年代に入ると高校進学者が増えたため職業指導というより「進路指導」が一般的な呼び名になっています。
2. 厚生労働省とキャリアコンサルタントの関わりについて
(1)2001年以前( 完全な民間資格)
1950年代以降になると日本でもアメリカで発展してきたキャリア理論やカウンセリング理論が入ってきて、多くの団体が講習や研修を実施して、独自の「キャリアコンサルタント系」資格が生まれました。ただ、この時点では、国(厚生労働省)は関与していませんでした。
結果的に、理論はアメリカの伝統あるものを使っているが、講習や研修の内容はバラバラで
不十分なものが多くなってしまいました。
(2)2002年から2007年まで(厚生労働省の指定団体)
1990年代に入るとバブルが崩壊して日本でも、不況が長期化し、産業構造の変化を余儀なくされました。日本が「失われた10年」と言われている時代です。日本の高度成長を支えてきた終身雇用や年功序列の制度(いわゆる三種の神器)にほころびが見られ、雇用の流動化が本格的に始まりました。つまり、「転職が当たり前」の時代が日本でも始まったのです、しかし、日本では核家族化や地方での過疎化が進み、家族や地域が、就職や失業で悩んでいる人を十分に支えきれない状況になっていました。
そこで、国が仕事で悩んでいる人や困っている人をサポートする仕組みとして立ち上げたのがキャリアコンサルタントです。具体的なイメージとしては、ハローワークの相談員のような方を、もっと「働く現場」(企業や学校などの組織)に増やそうという狙いがありました。発案者は、小泉内閣で、国務大臣だった竹中平蔵氏です。アメリカの労働市場やキャリアコンサルタントにとても詳しい方です。
厚生労働省は、キャリアコンサルトを養成するためのガイドラインを作成しました。いわゆる指定基準です。テキスト、講師、カリキュラムをなど広範囲にわたり、相当ハードルが高い基準になっています。これを満たした団体の養成講座が、厚生労働省のお済付き(指定)がもらえる仕組みです。ここで注意すべきは、厚生労働省のお済付きはもらっても、国家資格になったわけではありません。あくまで民間資格であることに注意してください。当初は約20団体程ありましたが、結局、残ったのは10団体です。
(3)2008年から2016年3月まで
2008年に厚生労働省は、以下の制度を新たに創設しました。
① 国家検定キャリアコンサルティング2級・1級の創設(ただし、1級は2011年から)
② 登録キャリアコンサルタントの創設
① について
2007年までに、指定団体の合格者は、一万人を超えました。ただ、10団体がバラバラで独自に実施していたので、統一が取れないし、一般の方からもわかりにくい。そこで、レベルアップをした統一的な資格を創設したいという厚生労働省は、考えました。その結果、新たに生まれたのが国家検定キャリアコンサルティング2級技能士と1級技能士です。従来の指定団体の資格と区別するために、従来の団体の資格を、標準レベルキャリコンサルタントと呼びます。2級技能士を熟練レベルと呼びます。1級技能士を指導レベルと呼びます。要するに、標準レベルは、新米のキャリコン、熟練レベルは、ベテランのキャリコン、指導レベルは、キャリコンの相談にのってくれる先生のようなイメージです。
② について知事
「登録キャリアコンサルタント」は、ジョブカードを作成するときに、相談にのってくれて最終的に承認する方です。ハローワークで職業訓練を受けると時に、ジョブカードを作成し、その方にふさわしい職業訓練を受けてもらうために始まった制度です。2日間の講習で取得できます。キャリアコンサルタントの数が不足していたので、その補充のために認められたものです。2016年に「ジョブカード作成アドバイザー」と名称変更になりました。そして、2019年3月で、講習はなくなりました。国家資格キャリアコンサルタントの登録人数が5万人を超えたので、補充の必要がなくなったためです。ただし、すでに資格をお持ち方は、資格は有効です。喪失するわけではありません。
(4)2016年4月以降(国家資格)
2016年4月に、標準レベルのキャリアコンサルタントが国家資格になりました。
その背景は何でしょうか?
厚生労働省の指定団体として10年以上たち、登録者も2015年には、2万人を超えました。しかし、国の狙い通りには進みませんでした。確かに登録者はある程度、確保できました。しかし、キャリアコンサルタントは、国が考えたようには「働く現場」に広がりませんでした。キャリアコンサルタントの方が、資格を生かしてキャリアコンサルタントとして相談業務を行っているのは、民間では大企業のごく一部にすぎないというのが現実です。理由は、中小企業には、人事部の他にキャリア室を置くような資金的な余裕ないのです。多くのキャリアコンサルタントは、ペーパードライバー状態になっています。これは「働く現場」にキャリアコンサルタントを広く置くという国の狙いとかけ離れている状況です。中小企業のど真ん中にキャリアコンサルタントが多くいて、相談業務を行ってこそ、国の狙いが初めて達成できるのです。
そこで、国は、キャリアコンサルタントを国家資格に格上げして、ステータスのアップを図り、さらに助成金も支給して、中小企業への定着を進めようとしているのです。
また、国家資格キャリアコンサルタントが名称独占になったことには注意しましょう。
キャリアコンサルタントと名のるには、国家資格に合格して、登録しなくてはなりません。一級技能士も2級技能士も「技能士」であって、キャリアコンサルタントと名のるには、キャリアコンサルタントとして登録する必要があります。
3. 今後のキャリコン業界の展望について
国家資格になって約3年がたちました。「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等に関する報の告書」が公表されました。それに基づき2020年4月からキャリアコンサルタント養成講座のカリキュラムも改正されました。大きな改正点は、① 企業内キャリコンの充実、② 事業場における治療と職業生活の両立支援、② リカレント教育の拡充と発展
です。詳しくは、別の機会に説明します。要するに、中小企業にキャリアコンサルタントを定着させるという当初の国の狙いが、一歩具体化されました。また、病気になっても働かなくてはならない人に対するサポートの仕組み作りです。それと「人生100年時代」の到来に備え、いつでもやり直しができる社会を目指すということです。
キャリアコンサルタントの役割は、ますます重要になり、その未来は明るいと確信いたします。
いかがでしたか?厚生労働省との関係について、わかりましたでしょうか?
今後、ますます需要が増える資格だと思います。
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