キャリアコンサルタントのこれから

皆さん、キャリアコンサルタントという言葉を聞いたことはありますか?ここでは「キャリアコンサルタント これから」についてご紹介したいと思います。

具体的には、

1. 日本におけるキャリアコンサルタントの歩み
(1)バブル期以前
(2)バブル崩壊後
(3)国家検定技能士・登録キャリアコンサルタントの誕生
(4)国家資格の誕生
2. キャリアコンサルタントの現状の課題
(1)行政機関について
(2)教育機関について
(3)民間企業について
(4)NPO法人について
(5)フリーランスについて
3. キャリアコンサルタントの今後について

について紹介していきたいと思います

1. 日本におけるキャリアコンサルタントの歩み

(1)バブル期以前
キャリアコンサルタントの発祥の地は、アメリカです。制度として確立するきっかけになったのは1929年から始まった10年間の世界恐慌です。失業者が大量発生し、そのまま第二次世界大戦に突入し1945年に戦争が終了すると何十万人という復員兵を含め就職斡旋活動・心理的精神的ケアが緊急課題になりました。
正式には1951年にアメリカ心理学会で「カウンセリング心理学」が公式承認され、これがキャリアコンサルタントは始まりといえます。アメリカでは1世紀近い歴史があります。
1950年代以降になると日本でもアメリカで発展してきたキャリア理論やカウンセリング理論が入ってきて、多くの団体が講習や研修を実施して、独自の「キャリアコンサルタント系」資格が生まれました

(2)バブル崩壊後
1990年代に入るとバブルが崩壊して日本でも、不況が長期化し、産業構造の変化を余儀なくされました。日本が「失われた10年」と言われている時代です。日本の高度成長を支えてきた終身雇用や年功序列の制度(いわゆる三種の神器)にほころびが見られ、雇用の流動化が本格的に始まりました。つまり、「転職が当たり前」の時代が日本でも始まったのです、しかし、日本では核家族化や地方での過疎化が進み、家族や地域が、就職や失業で悩んでいる人を十分に支えきれない状況になっていました。
そこで、国が仕事で悩んでいる人や困っている人をサポートする仕組みとして立ち上げたのがキャリアコンサルタントです。具体的なイメージとしては、ハローワークの相談員のような方を、もっと「働く現場」(企業や学校などの組織)に増やそうという狙いがありました。発案者は、小泉内閣で、国務大臣だった竹中平蔵氏です。アメリカの労働市場やキャリアコンサルタントにとても詳しい方です。
厚生労働省は、キャリアコンサルトを養成するためのガイドラインを作成しました。いわゆる指定基準です。テキスト、講師、カリキュラムをなど広範囲にわたり、相当ハードルが高い基準になっています。これを満たした団体の養成講座が、厚生労働省のお済付き(指定)がもらえる仕組みです。ここで注意すべきは、厚生労働省のお済付きはもらっても、国家資格になったわけではありません。あくまで民間資格であることに注意してください。当初は約20団体程ありましたが、結局、残ったのは10団体です。

(3) 国家検定技能士・登録キャリアコンサルタントの誕生
2008年に厚生労働省は、以下の制度を新たに創設しました。
① 国家検定キャリアコンサルティング2級・1級の創設(ただし、1級は2011年から)
② 登録キャリアコンサルタントの創設

① について
2007年までに、指定団体の合格者は、一万人を超えました。ただ、10団体がバラバラで独自に実施していたので、統一が取れないし、一般の方からもわかりにくい。そこで、レベルアップをした統一的な資格を創設したいという厚生労働省は、考えました。その結果、新たに生まれたのが国家検定キャリアコンサルティング2級技能士と1級技能士です。従来の指定団体の資格と区別するために、従来の団体の資格を、標準レベルキャリコンサルタントと呼びます。2級技能士を熟練レベルと呼びます。1級技能士を指導レベルと呼びます。要するに、標準レベルは、新米のキャリコン、熟練レベルは、ベテランのキャリコン、指導レベルは、キャリコンの相談にのってくれる先生のようなイメージです。
② について
「登録キャリアコンサルタント」は、ジョブカードを作成するときに、相談にのってくれて最終的に承認する方です。ハローワークで職業訓練を受けると時に、ジョブカードを作成し、その方にふさわしい職業訓練を受けてもらうために始まった制度です。2日間の講習で取得できます。キャリアコンサルタントの数が不足していたので、その補充のために認められたものです。2016年に「ジョブカード作成アドバイザー」と名称変更になりました。そして、2019年3月で、講習はなくなりました。国家資格キャリアコンサルタントの登録人数が5万人を超えたので、補充の必要がなくなったためです。ただし、すでに資格をお持ち方は、資格は有効です。喪失するわけではあ

(4)国家資格の誕生
2016年4月に、標準レベルのキャリアコンサルタントが国家資格になりました。
その背景は何でしょうか?
厚生労働省の指定団体として10年以上たち、登録者も2015年には、2万人を超えました。しかし、国の狙い通りには進みませんでした。確かに登録者はある程度、確保できました。一方、キャリアコンサルタントは、国が考えたようには「働く現場」に広がりませんでした。キャリアコンサルタントの方が、資格を生かしてキャリアコンサルタントとして相談業務を行っているのは、民間では大企業のごく一部にすぎないというのが現実です。理由は、中小企業には、人事部の他にキャリア室を置くような資金的な余裕ないのです。多くのキャリアコンサルタントは、ペーパードライバー状態になっています。これは「働く現場」にキャリアコンサルタントを広く置くという国の狙いとかけ離れている状況です。中小企業のど真ん中にキャリアコンサルタントが多くいて、相談業務を行ってこそ、国の狙いが初めて達成できるのです。
そこで、国は、キャリアコンサルタントを国家資格に格上げして、ステータスのアップを図り、さらに助成金も支給して、中小企業への定着を進めようとしました。
また、国家資格キャリアコンサルタントが名称独占になったことには注意しましょう。
キャリアコンサルタントと名のるには、国家資格に合格して、登録しなくてはなりません。一級技能士も2級技能士も「技能士」であって、キャリアコンサルタントと名のるには、キャリアコンサルタントとして登録する必要があります。

2. キャリアコンサルタンの現状と課題

一番の問題は、この資格で食べていけるのか?ということです。
正直に言って、現状はキャリアコンサルテントの資格だけで、生計を立てている方は少な
いです。この資格でハローワークの相談員をしている方などは、キャリコンの資格で生計を立てていると言えるかもしれません。仕事をするうえでキャリコンの資格が要求されるからです。しかし、このような仕事は少ないです。多くの場合は、キャリコンの資格を持っていると、周囲から「評価される」程度です。例えば、会社の人事部にいてキャリコンの資格を取ることを会社から推進された。それでキャリコンの資格を取得した。周りから「頑張ったね」と言われた。こんな感じです。それで昇給したとかということは、基本的にはありません。もちろん例外はあります。
では、現状のキャリコンの就職先について具体的にみていきます。

(1)行政機関について
まずハローワークの相談員があげられます。現在では、ハローワークの相談員になるためには、標準レベル以上のキャリコン資格が必要です。業務委託や非正規で仕事をしている方は、資格をもっていないと契約の更新をしてもらえません。また管理職になると2級以上の資格取得を求められることがあったり、昇給の条件になることもあります。
同様のことは、国や地方公共団体が実施している職業訓練の相談員の方にも言えます。
ここでの課題は、雇用形態です。正規雇用の方が少ないです。非正規雇用の方が非常に多いです。ただし、無期転換ルールが施行されたので、改善が期待できます。

(2)教育機関について
① 大学のキャリアセンターについて
全国の7割を超える大学では、キャリアセンターの相談員にキャリコンの有資格者を配置しています。その割合は、ますます増加する傾向にあります。多くの大学のキャリアセンターでキャリアコンサルタントがカリキュラム作成や相談業務において活躍しています。多くの大学では、標準レベル以上のキャリコン資格が必要になっています。
ここでの課題も雇用形態で、無期転換ルールが施行での、改善が期待できます

② 中高の進路相談室について
ここには、そもそもキャリアコンサルタント方は、あまりいません。様々なカウンセラー資格をお持ち方が多いです。大学のキャリアセンターとは異なります。大学ではそれぞれの大学が独自のキャリア教育のプログラムを作成する必要があります。これに対して中高では文部科学省が全国一律でキャリア教育の内容を決めています。そのため、キャリコンが活躍する場面が少ないのが現状です。今後の活躍が期待されます。

(3)民間企業について
① 人材派遣・紹介会社
人材派遣会社や紹介会社では、マッチング業務が重要になります。つまり、その人の適性やの能力を見て、その人にふさわしい仕事を見つける作業です。まさに、キャリアコンサルタントの業務そのものです。人材派遣会社や紹介会社では、多くのキャリアコンサルタントの方が活躍されています。法改正により派遣会社の派遣元には、キャリアコンサルタントと同等の能力を有する人材を設置しなくてはならなくなりました(努力義務)。今後、この業界では、キャリアコンサルタントの需要が高まり、活躍の場が広がることが期待されます。

③ ①以外の一般企業
キャリアコンサルタントの方が、資格を生かしてキャリアコンサルタントとして相談業務を行っているのは、前述したように一般の民間企業では大企業のごく一部にすぎないというのが現実です。
しかし、厚生労働省も「企業内キャリコンの育成」に力を入れようとしています。今後、キャリアコンサルタントの活躍や期待される新たな市場といえます。

(4)NPO法人について
多くのNPO法人が「ひきこもり」「フリーター」の支援を行っています(ジョブカフェなど)。
しかし、財政的には厳しいのが現状です。ボランティアとして活躍されている方も多いです。

(5)フリーランスについて
キャリアコンサルタントとして、フリーランスとして活躍されている方もいらっしゃいます。
しかし、いきなりフリーランスとして独立することは、人脈などがある場合を除いて、原則としておすすめできません。理由は、今まで述べてきたように、キャリコンが活躍している分野が、
限られているからです。もちろん今後活躍できる可能性ある分野は、たくさんあります。多くののフリーランスの方もはじめは、副業としてキャリコンのお仕事をされて、自分の専門分野を確立して独立されている方が多いです。

3. キャリアコンサルタントの今後について

国家資格になって約3年がたちました。「キャリアコンサルタントの能力要件の見直し等に関する報の告書」が公表されました。それに基づき2020年4月からキャリアコンサルタント養成講座のカリキュラムも改正されました。大きな改正点は、① 企業内キャリコンの充実、② 事業場における治療と職業生活の両立支援、② リカレント教育の拡充と発展
です。詳しくは、別の機会に説明します。要するに、中小企業にキャリアコンサルタントを定着させるという当初の国の狙いが、一歩具体化されました。また、病気になっても働かなくてはならない人に対するサポートの仕組み作りです。それと「人生100年時代」の到来に備え、いつでもやり直しができる社会を目指すということです。
キャリアコンサルタントの役割は、ますます重要になり、その未来は明るいと確信いたします。

いかがでしたか?「キャリアコンサルタント これから」イメージできたでしょうか?
今後、ますます需要が増える資格だと思います。
ご興味ある方は、是非アジャイルキャリアまで、ご連絡下さい!